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実戦コラム

違いが分かる技術用語・特許用語(10)

      16   reflectanceとreflectivity, transmittanceとtransmissivity, absorbanceとabsorptivity 

これらは光などの電磁波の性質を述べる用語である。本論に入る前に、reflection(反射)、transmission(透過)、吸収(absorption)の関係について説明する。

 反射は、2つの媒体の境界で光や電波などの波動が当たって跳ね返る(表面反射)、あるいはある媒体内で跳ね返る(体積反射)現象のことである。透過は、媒体を光や電波が通り抜ける現象のことである。吸収は媒体中で光や電波が吸収されて熱エネルギーに変化する現象のことである。

 入射光に対する反射光の比率を表す語に反射率(reflectance)と反射能(reflectivity)がある。reflectivityは2つの媒体の境界での光の反射率を意味し、reflectanceは2つの特定の媒体の内部反射や内部散乱などの効果を加味した光の反射率を意味する。

 次の図は、空気からガラスを通って空気へ抜ける光の反射率を模式的に示している。

2019418152039.png

 この図で、空気からガラスに入る光のreflectivity(反射能)は0.074である。従って、ガラスを透過する光の透過能(transmissivity)は1.0-0.074 = 0.926となる。ガラスを透過した光の一部は後面で内部反射されて上に向かう。この光の一部は外に出るが、一部は上の境界で内部反射されて下に向かう。このような内部反射が何度も繰り返されて内部反射光は減衰する。上の境界で内部反射光を全部合わせた値が反射率(reflectance)となる。従って、reflectanceはreflectivityより大きな数値を取る。一方の透過光に視点を変えると、透過能(transmissivity)は0.926だが、実際には内部反射で上面から上に逃げる光を差し引いた値がtransmittance(透過率)となる。当然のことだが、transmittanceはtransmissivityよりも小さくなる。不透明材料の場合は、光の透過は起こらないと考えられるので、reflectanceとreflectivityは実質的に同じとなる。

 こうしてみると、実際にはreflectanceとtransmittanceが実際の測定値を反映していると考えられる。

 では、実際の用例でこれらの語がどのように使用されているかを検証する。

用例1.     An electronically dimmable optical device, including, in sequence, an active absorbing polarizer; a first static reflective polarizer; an active polarization rotator; and a second static reflective polarizer; configured so that the reflectivity and/or transmissivity of the device can be controlled (increased or decreased) by application of a voltage across the active absorbing polarizer and/or the active polarization rotator. (USP 9,304,333)

公開公報の訳:順番に能動吸収偏光子12と、第1の静的反射偏光子14と、能動偏極回転子と、第2の静的反射偏光子18と、を含む電子的調光可能光学装置であって、同装置の反射率及び/又は透過率が能動吸収偏光子及び/又は能動偏極回転子の両端に電圧を印加することにより制御(増加又は低減)されるように構成された電子的調光可能光学装置。(特開2018-32042)

2019418152649.pngのサムネイル画像

 英語のreflectivityとtransmissivityがそれぞれ「反射率」と「透過率」と訳されている。

用例2.     The article of one or more embodiments exhibits superior optical performance in terms of light transmittance and/or light reflectance. In one or more embodiments, the article exhibits an average light transmittance (measured on the anti-reflective surface only) of about 92% or greater (e.g., about 98% or greater) over an optical wavelength regime (e.g., in the range from about 400 nm to about 800 nm or from about 450 nm to about 650 nm). In some embodiments, the article exhibits an average light reflectance (measured at the anti-reflective surface only) of about 2% or less (e.g., about 1% or less) over the optical wavelength regime. (WO2016/018490)

公表公報の訳:1つ以上の実施形態の物品は、光透過率および/または光反射率に関して優れた光学的特性を示す。1つ以上の実施形態において、物品は、光学波長領域(例えば、約400nm~約800nm、または約450nm~約650nmの範囲)で、約92%以上(例えば、約98%以上)の(反射防止表面のみで測定される)平均光透過率を示す。実施形態によっては、物品は、光学波長領域で、約2%以下(例えば、約1%以下)の(反射防止表面のみで測定される)平均光反射率を示す。(特表2017-519232改)

 測定値ということでreflectanceとtransmittanceが使用されている。

用例3.     The relative energies of the output pulses can be controlled by choosing the transmission and reflection coefficients of the beam splitters. (WO2015/195877)

公表公報の訳:出力パルスの相対エネルギーは、ビームスプリッタの透過率および反射率を選択することによって制御できる。(特表2017-525144)

 ここでは、transmittanceの代わりに、transmission coefficient(透過係数)が、reflectanceの代わりにreflection coefficient(反射係数)が使用されている。訳はどちらも「率」となっている。

用例4.     Adjacent microlayers also have a refractive index mismatch Δnz that provides the film with reduced reflectivity R1 and increased transmission for p-polarized light in the extended wavelength band incident on the film in a first plane of incidence at an angle θ oblique, where R1 is no more than half of the minimum of on-axis reflectivity. (WO2010/059566)

公表公報の訳:隣接するマイクロ層はまた、斜角θの第1入射面においてフィルムに入射する拡張された波長帯域にて、p偏光に関して、低減した反射率R1及び増加した透過率をフィルムに提供する、屈折率不整合Δnzを有し、R1は軸上反射率の最小値の半分以下である。(特表2012-509509)

 用例1と同じく、reflectivityとtransmissivityがそれぞれ「反射率」と「透過率」と訳されている。

 次に、日本語明細書の英訳例を示す。

【課題1】フィルム幅方向中央部から5cm×5cmのサイズでサンプルを切り出した。次いで、分光光度計((株)日立製作所製、U-4100  Spectrophotometer)を用いて、入射角度Φ=0度における透過率及び反射率を測定した。

訳例:A sample of 5 cm square was cut off from the center along the width of the film.  The transmittance and reflectance at an incident angle Φ = 0 degree of the sample were determined with a photospectrometer U-4100 made by Hitachi, Ltd.

【課題2】光源から測定光をハーフミラーに照射した場合、理想的にはハーフミラーの表面からの入射された光に対しても、ハーフミラーの裏から入射された光に対しても、反射率および透過率は同じであることが望ましい。しかしながら図6に示すように、実際にはハーフミラーはわずかな厚みを有しており、表面が蒸着層となっていることが多い。そうすると、ハーフミラーの表面から入射された光に対する反射率(または透過率)と裏面から入射された光に対する反射率(または透過率)は、わずかに異なる可能性がある。そして絶対反射率測定を正確に測定する場合は、このハーフミラーの表面、裏面に対する誤差(表面と裏面の特性の違い)も考慮する必要がある。

訳例:It is preferred that the incident light on the front face of the half mirror and the incident light on the back face of the half mirror have the same reflectance and transmittance ideally in the case that the half mirror is irradiated with light from the light source.  However, the half mirror actually has a slight thickness as shown in Fig. 6 and is provided with a deposited surface layer; hence, the incident light on the front face and the incident light on the back face will have slightly different reflectance or transmittance.  Accordingly, the absolute reflectance should be measured in view of such a difference between the front and back surfaces of the half mirror.

 

 次に、absorbanceまたはabsorbencyは、ある物体を光が通った際に強度が弱まる度合いを示す無次元量のことで、「吸光度」と呼ばれる。吸光度は透過率(transmittance)の逆数の常用対数値で表現される。詳しく説明すると、波長ラムダにおける吸光度Aλ

  Aλ = - log(I/I0

で表される。つまり、入射光強度I0と透過光強度Iの比(透過率)の常用対数をとり、吸収のある場合を正とするために負号を付けたものである。透過率が光路長に対し指数関数的に減衰するのに対し、吸光度は対数で表されているため光路長に比例して減少する。

 なお、absorptivityは、辞書では「吸光率」、「吸光係数」、「吸収率」、「吸収能」、「吸収度」、「吸収係数」、「吸光」、「吸収性」など多くの訳語が登録されているすが、「吸収能」がもっとも一般的な用語と考えられる。

用例5.     Upon addition of the H2O2, the absorbance increased rapidly at all wavelengths and then decreased rapidly.

訳例:過酸化水素を添加すると全波長で吸光度は急速に増加し、次いで急速に減少した。

【課題3】450nmおよび550nmにおける吸光度を測定し、これらの吸光度の差を求めた。

訳例:The absorbances at 450 nm and 550 nm were measured and the difference between them was calculated.

 

まとめ

  1. 反射能(reflectivity)は2つの物体の境界における光の反射率を表し、反射率(reflectance)はreflectivityに内部及び裏面での反射による寄与を加えた値を表す。従って、一般には、reflectanceの方がreflectivityより大きい。
  2. 透過能(transmissivity)は1からreflectivityを引いたものである。入射光のすべてが裏面から出射するわけではないので、透過率(transmittance)は透過能(transmissivity)よりは小さい。
  3. 明細書ではreflectance (transmittance)とreflectivity (transmissivity)のどちらを指しているのか明確でないことがある。

 

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