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実戦コラム

違いが分かる技術用語・特許用語(8)

      13  カスケード(cascade)とカスコード(cascode) 

これらの紛らわしい2つの語は電気回路を記述する用語です。

 カスケード(cascade)は滝あるいは、急峻な岩場にある多段の滝を意味する語が転じて、電気分野では、例えば、複数のアンプを直列に接続した一般的な回路構成のことを指します。

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 カスコード(cascode)はcascade connection(直列接続)とtriode(三極管)を組み合わせたいわゆるかばん語で、直列配置された2つのトランジスタのうちのQ1がエミッタ接地、Q2がベース接地となっていて、かつQ1の出力(コレクタ)にQ2の入力(エミッタ)が接続された回路のことをカスコード回路と呼びます。

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 例えば、特開2016-127496には、「第1トランジスタ23のエミッタが第1入力端子21に接続され、第1トランジスタ23のコレクタと第2トランジスタ24のコレクタが接続されることにより、第1トランジスタ23及び第2トランジスタ24はカスケード接続される」、さらに、「第4トランジスタ41及び第5トランジスタ42のそれぞれはnpnトランジスタであり、第4トランジスタ41はエミッタ接地され、第5トランジスタ42はベース接地されることによりカスコード接続される。」との記載があります。

 

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 これら2つの語は非常に紛らわしいのでよく誤用されています。例えば、次例のように、特に、「カスコード」とすべきところが「カスケード」となっている誤用が多くあります。

  1. The drain of the cascode transistor 516 and the drain of the cascade transistor 526 are each coupled to a first side of a transformer 540. The drain of the cascode transistor 526 and the drain of the cascode transistor 528 are each coupled to a first side of a transformer 544. (WO2015/148893)[カスコードトランジスタ516のドレイン及びカスケードトランジスタ526のドレインは各々、変圧器540の第1の側に結合される。カスコードトランジスタ526のドレイン及びカスコードトランジスタ528のドレインは各々、変圧器544の第1の側に結合される。(特表2017-510202)]

 

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 文脈および図面からも明らかなように、"cascade transistor"は"cascode transistor"の誤りです。PCT出願の翻訳文ということで、公表公報でもこの誤りは是正されていません。

 日英翻訳でも同じような間違いが見いだされます。翻訳者として細心の注意を払う必要があります。

 cascadeという語は、「次から次に起こる」という意味でも、よく使用されます。例えば、化学分野では「カスケード反応(cascade reaction)」という語があります。これは、一度の操作によって3つ以上の反応が連続して起こる反応様式のことです。最初に述べた、小滝の水が階段状に連なって流れ落ちる情景になぞらえた表現です。この連続反応はタンデム反応あるいはドミノ反応(domino reaction)とも呼ばれます。

 血液の凝固もカスケード反応と言われています。凝固カスケード(coagulation cascade)という用語があります。インターネットで画像検索すると、凝固カスケードの図解が数多くヒットします。興味のある方は是非ご覧ください。

 機械分野では、cascadeは翼列と呼ばれることがあります。これは、同じ翼を等間隔で、かつ同一の姿勢で直線的または円上に配列したものを意味する語です。

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特開2015-071968

 

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