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実戦コラム

違いが分かる技術用語・特許用語(4)

4      Inject (injection)eject (ejection)

 語形から容易に推測できるように、この2つの英単語は、先月紹介したsubjectとobjectの仲間である。

 まず、injectは接頭語のin-(中に)に接尾語のject(投げる)がついたもので、物体をある閉鎖系の中に勢いよく入れるという意味を持っている。一方のejectは接頭語のe-(から外に)にjectがついたもので、閉鎖系からある物体を勢いよく出すという意味を持っている。

 これらの語に対応する日本語は、injectに対しては「~を注入する」あるいは「~を注射する」が本来の英語の意味を正しく反映している。一方のejectに対しては「放出する」、「取り出す」などの用語があてはめられているが、筆者にはもう一つピンとこない。飛行機などからパイロットを「脱出させる」という意味でも使用されているが、これは本来の英語の意味をよく反映している。

 これらの動詞の名詞形は、injectionとejectionである。勢いよく入れるか出す行為を示す名詞であることは言うまでもない。まず、injectionの日本語は「注射」あるいは「注入」が挙げられる。これらの日本語は問題ないが、樹脂加工分野では「射出」という日本語があてはめられている。射出成形では、溶融した樹脂をノズルからモールド(これが閉鎖系である)に勢いよく注入するので、本来は、「射出」ではなく「射入」でなければならない。この分野で日本語を決めた人は、ノズルから勢いよく樹脂がでる状況を踏まえてあえて「射出」としたのが実情である。このように英語と日本語では、同じ現象を異なる観点で表現することがあるので注意が必要である。

 これに対して、ejectionの日本語として使用されている「噴出」あるいは「追い出し」は、勢いあるいは強制力が感じられるが、「排出」あるいは「放出」には必ずしもそういう意味はない。昔のカセットレコーダーのejection buttonを押すと、ぽんとカセットが飛び出してきたが、これがejectionの典型的な用法だが、日本語は「取り出しボタン」で勢いが感じられない。さらに、分野によっては「出射」が使用されることもある。これは、injection「射出」と識別できるので許容できる。ところが、ejectionも「射出」と訳されている例を見ると考え込んでしまう。本来はejectionがこの意味で、injectionは先ほども述べたとおり「射入」なのだが、樹脂成形で「射出」が頻繁に使用され、一方のejectionに対する「射出」はそれほど使用されていないので、こちらが誤りのように思えてしまう。何とも悩ましい話である。

 

用例1.      The systems include a restriction element (35) that reduces the backflow of polymer melt in an extruder while polymeric material is injected into a mold (37) or ejected from a die. The restriction element is positioned upstream of a blowing agent injection port (54) to maintain the solution of polymer and blowing agent in the extruder above a minimum pressure throughout an injection or ejection cycle, and preferably above the critical pressure required for the maintenance of a single-phase solution of polymer and blowing agent. The systems can be used in injection molding, blow molding, or in any other processing techniques that include injection or ejection cycles. In some embodiments, the systems utilize reciprocating screws for injection or ejection. In other embodiments, the systems include an accumulator connected to an outlet of the extruder, in which a plunger moves to inject  polymeric material into a mold or eject polymeric material from a die.  (WO2000/059702)[本発明のシステムは、ポリマー物質が金型(37)射出すなわちダイから排出されている間に、押出機中のポリマー溶融物逆流を抑える制限部材(35)を含む。制限部材は発泡剤射出(54)より上流に配置されていて、押出機内のポリマーと発泡剤との溶液を、射出サイクルすなわち排出サイクル全体にわたって最小圧力より高い圧力、かつ好ましくはポリマーと発泡剤との単相溶液を保持するのに必要な臨界圧力より高い圧力に保持する。本発明のシステムは、射出成形、吹込成形、あるいは射出サイクルすなわち排出サイクルを含他のあらゆる処理方法使用することができる。幾つかの実施態様においては、本発明のシステムは射出すなわち排出のために往復運動スクリューを使用する。他の実施態様においては、本発明のシステムは、押出機の出口に連結したアキュムレータを含み、アキュムレータ内をプランジャーが移動して、ポリマー物質を金型中に射出、すなわちポリマー物質をダイから排出させる。(特表2002-540979)下線部は筆者による修正]

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 用例1は射出成形のメカニズムを述べている。金型(37)には溶液が注入されるのでinjectedが使用されている。訳は辞書に従って「射出(され)」となっている。溶液はダイ(70)から吐出されるのでejectedが使用されている。訳は「排出(され)」となっている。この2つの動作は、同じ物を金型から見るかダイから見るかの観点の違いで説明されているので、orは「または」でなく「すなわち」と訳さなければならない(原訳は「または」になっている)。「射出成形」が定訳であるにしても、「射出」と「排出」は区別が付きにくい。動詞のinjectは「注入」でよいと思うのは筆者だけだろうか?

 

用例2.      The injector plate 21 and the injector piston 20 contain a recess 26 to provide clearance to house an ejector cylinder 27 that is mounted via standoffs 28 to the moving platen 12. The ejector cylinder 27 contains an ejector piston 29 that is mounted on an ejector plate 30, to which is mounted an ejector rod 31 that passes through a hole 53 in the moving platen 12 and a hole 44 in the core half of the mold 23, to eject the molded part 32 off the mold core (as shown in Figure 3). (WO2006/063433)[インジェクタプレート21及びインジェクタピストン20は、スタンドオフ28を介して可動プラテン12に取り付けられるエジェクタシリンダ27を収容するクリアランスを与えるリセス26を含む。エジェクタシリンダ27は、エジェクタプレート30に取り付けられるエジェクタピストン29を収容し、エジェクタプレート30には、可動プラテン12内の穴53及び金型23のコア半体の穴44を通るエジェクタロッド31が取り付けられ、それにより、成形品32を金型コア(図3に示す)から突き出す。(特表2008-529824)]

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用例3.      The configuration is such that the injector plate 21 and the ejector plate 30 can be operated independently of each other at the appropriate time in the molding cycle to respectively effect injection of the material and ejection of the part, as will be described below. (WO2006/063433)[この構成は、以下に説明するように、インジェクタプレート21及びエジェクタプレート30が成形サイクル中に適宜互いとは独立して動作して、材料の射出及び成形品の突出しをそれぞれ行うことができるようになっている。(特表2008-529824)]

 

 用例2と3は同じ特許からの引用だが、injector plateとejector plateがカタカナ語になっている。前者を(材料の)「注入板」、後者を(成形品の)「取り出し板」とした方が分かりやすい。「突き出し」も「取り出し」の方が自然である。

 

用例4.      A hypodennic injection system particularly for use in mass immunizations having a handpiece (14) with a grasping mechanism (172) for holding ampules (21) filled with injectate, a plunger (15) for driving into the ampule (21) to discharge the injectate in an injection process, an injection spring mechanism (152) for driving the plunger (15), a motor (19) and/or manual mechanism for cocking the injection spring mechanism (152), and an ampule ejection mechanism (170) for ejecting ampules (21) after use under control of a release mechanism. Ampules (21) can be loaded, used and ejected without contact by the user of the system or the patient being injected. Also disclosed are a filling station (990) for filling ampules (21) through their injection orifices, and an arming device (48) for setting the injection spring (152). Ampules (21) are disclosed having a piston (718) which is drivable towards an orifice to discharge injectate through the orifice. Ampules (21) are also disclosed having enlarged proximal portions (717) for easy grasping by the grasping mechanism (172) of the injector (400). (WO2003/015846)[特に大量の予防接種において使用される皮下注射システムであって、注射液で満たされたアンプル(21)を保持するための把持機構(172)と、注射工程において注射液放出させるためアンプル(21)内へと駆動されるプランジャ(15)と、プランジャを駆動するための注射ばね機構(152)と、注射ばね機構(152)を蓄勢するためのモータ(19)および/または手動の機構と、解放機構の制御の下で使用後のアンプル(21)を排出するアンプル排出機構(170)とを有する手持ち用具(14)を備えている。本システムのユーザ、あるいは注射を受ける患者は、手で触れることなくアンプル(21)を装填し、使用し、排出することができる。アンプルへ(21)の注入をアンプル(21)の注射用オリフィスを通して行うための注入設備(990)、および注射ばね(152)の蓄勢を行うための蓄勢設備(48)もここに開示される。ここに開示のアンプル(21)は、オリフィスを通して注射液放出するためオリフィスに向かって駆動されるピストン(718)を有している。またここに開示のアンプル(21)は、注射器(400)の把持機構(172)で容易に把持できるよう手前側の部分(717)が大きくなっている。(特表2005-508214)]

 

 用例4はもとの図面が不鮮明なので、省略したが、注射システムに関する特許である。アンプルを「排出する」とあるが、このejectも「取り出すの方が自然である。また、dischargeを「放出」としているが、「吐出」の方がよいと思われる。

 

用例5.      A balloon for injecting material into a wall of a hollow organ of a human, comprising: an expandable balloon body having a surface and having an axis; at least one predefined ejection port on said body adapted for ejection of fluid therefrom, in a transaxial direction; and an impulse source configured for and adapted to eject material out of said point at a velocity and shape suitable for mechanically penetrating tissue adjacent said port. (WO2006/006169)[材料を人間の中空器官の壁内に注入するためのバルーンであって、表面を有しかつ軸を有する、膨張可能なバルーン本体と、流体を体軸横断方向に噴出するように適応された前記本体上の少なくとも1つの予め定められた噴出ポートと、前記ポートに隣接する組織を機械的に貫通するのに適した速度および形状で前記から材料を噴出するように構成されかつ適応されたインパルス源と、を含むバルーン。(特表2008-506447)]

 

 用例5では、ejectを「噴出」としているが、大げさである。これも「吐出」がよいと思われる。なお、下線部のpointはportの間違いで、対応する訳の「点」も「ポート」の間違いである。

 以上のように、injection (inject)とejection (eject)は同じ状態を別の観点で説明している。

          

 

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